組織のナレッジマネジメントを促進! 暗黙知を形式知化する方法とは
ナレッジマネジメントとは、従業員が持つ知識・ノウハウなどの知識資産を社内で共有して、企業の成長や競争力の強化などにつなげる経営手法のことです。
ナレッジマネジメントを促進するには、従業員が保有している知識資産を組織内で蓄積・共有して、他者に伝える必要があります。しかし、勘や経験に基づいた暗黙的な知識(=暗黙知)は、言語化・図式化することが難しいといった課題があります。
社内で知識の共有・継承を行うには、このような暗黙知を形式知化することが重要なポイントとなります。
この記事では、ナレッジマネジメントにおける暗黙知とは何か、暗黙知を形式化するメリットや方法について解説します。
目次[非表示]
- 1.暗黙知とは
- 2.暗黙知を形式知化するメリット
- 3.暗黙知を形式知化する方法
- 4.①SECI(セキ)モデルを活用する
- 4.1.②情報共有の評価制度を整える
- 4.2.③優秀な従業員の知識を体系化する
- 4.3.④ナレッジマネジメントツールを導入する
- 5.まとめ
暗黙知とは
暗黙知とは、個人が持つ知識のうち、勘や経験といった他者に伝えることが難しい知識を指します。企業においては、優秀な従業員が持つノウハウや、効率的に業務を遂行するためのコツなどが暗黙知にあたります。
このような個人の勘や経験などに基づいた主観的な知識は、簡単に言語化・図式化できないため、他者に伝達するのが難しいのが特徴です。
反対に、言語化・図式化しやすく、他者に伝達しやすい知識を“形式知”といいます。企業においては、業務の基本的なフローや作業手順をまとめたマニュアル、システム・設備の説明書などが形式知にあたります。
▼暗黙知と形式知の比較
意味 |
具体例 |
|
暗黙知 |
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個人の経験や知識、ノウハウなど |
形式知 |
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業務マニュアルや取扱い説明書など |
ナレッジマネジメントを促進するには、優秀な従業員が持つ暗黙知を形式知化して、ほかの従業員への情報共有ができるように変換することが重要です。
暗黙知を形式知化するメリット
暗黙知を形式知化することで、以下のようなメリットが期待できます。
▼暗黙知を形式知化するメリット
- 属人化の解消
- 人材育成の効率化
- 従業員の業務スキルの向上
従業員が業務を通じて習得してきた知識やノウハウが共有されていない場合、特定の担当者しか業務を行えなくなり、属人化につながるおそれがあります。各従業員が持つ知識やノウハウを形式知化することで、社内全体のナレッジ共有が可能となり、ほかの従業員も同じ品質で業務を行えるようになります。
また、暗黙知を形式知化して、業務マニュアルや教育資料をつくることで、長期間の経験を積まなくても知識・ノウハウを習得できるようになり、従業員の育成がスムーズに進みます。
さらに、優秀な従業員の思考や行動などを形式知化して、社内全体で共有すれば、従業員の業務スキルの向上や、生産性の向上にもつながります。
暗黙知を形式知化する方法
従業員が持つ知識やノウハウなどを形式知化することで、ナレッジマネジメントを促進できます。
ここからは、暗黙知を形式知化する具体的な方法を4つ紹介します。
①SECI(セキ)モデルを活用する
暗黙知を形式知化するために、ナレッジマネジメントのフレームワークとなる“SECI(セキ)モデル”を活用する方法があります。
SECIモデルでは、共同化・表出化・結合化・内面化といった4つのプロセスを通じて暗黙知の理解を深めて、形式知化を図ります。
▼SECIモデルの4つのプロセス
プロセス |
取り組む内容 |
①共同化 |
暗黙知を暗黙知のまま他者に伝えて勘や感覚などを共有する |
②表出化 |
他者と共有した暗黙知を言葉や図を用いて具体化させて、
形式知に変換する
|
③結合化 |
既にある形式知と変換した形式知を組み合わせて、
新しい知識として形成する
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④内面化 |
形式知が知識として内面化されて、再び暗黙知となった段階で、
①~④のプロセスを繰り返し実行して知識を向上させる
|
また、SECIモデルでは、4つのプロセスに合わせて暗黙知・形式知を社内で共有するための“場(Ba)”を設ける必要があります。
▼SECIモデルに必要となる“場(Ba)”
場(Ba) |
具体例 |
共同化の場 |
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表出化の場 |
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結合化の場 |
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内面化の場 |
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②情報共有の評価制度を整える
従業員が持つ知識資産を積極的に共有してもらうために、評価制度を整えることも有効な方法といえます。
従業員のなかには、日々の業務に忙しく、自身が持つ知識やノウハウ、経験などを共有することに消極的な人もいると考えられます。
評価制度を設けて、積極的な情報共有を従業員に促すことで、暗黙知を形式知化できます。また、知識資産が共有されやすい職場環境をつくるには、暗黙知を形式知化する重要性や意義を説明して、従業員の意識づくりを行うことが大切です。
情報共有に関する評価制度には、以下のようなものが挙げられます。
▼情報共有に関する評価制度
- 社内表彰制度を創設する
- 人事評価項目にコンピテンシーの項目を追加する
③優秀な従業員の知識を体系化する
暗黙知の形式知化を図るために、優秀な従業員の知識を体系化することも必要です。
従業員のなかには、自身が有する暗黙知に気づいていない人もいます。本人が気づいていない暗黙知を掘り起こすために、ベテラン従業員や業務成績が優秀な従業員にヒアリングを行い、体系的に洗い出してもらうことがポイントです。
優秀な従業員が持つノウハウや成功体験などを文書でまとめてもらい、得られた情報を基に要因分析を行い、知識・ノウハウを言語化します。言語化した知識・ノウハウを整理して、業務マニュアルや作業手順などに落とし込むことで、形式知として従業員に共有できるようになります。
④ナレッジマネジメントツールを導入する
従業員が持つ暗黙知を体系化して蓄積・共有するために、ナレッジマネジメントツールを導入することが有効です。
ナレッジマネジメントツールとは、社内のナレッジを蓄積・共有・活用するためのツールです。業務マニュアルやデータベース、グループウェア、社内FAQ(Frequently Asked Questions:よくある質問)などの機能を用いて、従業員の知識の蓄積・共有を促せます。
業務を通して得た知識やノウハウ、経験などを、カテゴリに分けて登録したり、ほかの従業員が検索したりできる仕組みを構築することで、ナレッジマネジメントの促進につながります。
なお、ナレッジを蓄積する理由や具体的な方法については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、ナレッジマネジメントの重要なキーワードとなる暗黙知について、以下の内容を解説しました。
- 暗黙知の基礎知識
- 暗黙知を形式知化するメリット
- 暗黙知を形式知化する方法
従業員が持つ勘や経験、ノウハウなどの暗黙知は、言葉として伝えにくく、ほかの従業員へのナレッジ共有が難しくなる傾向があります。
形式知化するためには、SECI(セキ)モデルを活用する、情報共有の評価制度を設ける、従業員の知識を体系化する、ナレッジマネジメントツールを導入するといった方法があります。
暗黙知を形式知化することで、勘や経験に基づいた属人的な業務が解消されるほか、人材育成の効率化、業務スキルの向上などのメリットが期待できます。
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